歌口の欠けたフルート

今から40年程前まだ中学生だった私はまずは縦笛を始めます。
ヘンデルのソナタ、テレマンのソナタ、ブランデンブルク協奏曲2番、4番などブロックフレーテの為の音楽は数多くありました。
貧乏な家だったので、フルートは買ってもらえず毎日縦笛を吹いていました。
「いつかはフルートを吹いてみたい」
そう思うようになって、親にも聞いてみましたが「うちにそんなお金はない!」と一蹴されます。
ただ、親も少しは思うところがあったらしくそう言う話は近所にしていたみたいで、お隣のお屋敷(私の住んでいるのは木造のアパート)のご主人から
「昔使ったフルートがあるんだが、歌口に傷があって吹けるかどうかは分からないが使っても見るか?」との有難いお話がありました。
私は天にも昇る思いで早速頂戴し、吹いてみましたが、あまり良い音は鳴りませんでした。
いろいろと吹き方を変えてみましたがやっぱり結果は同じで良い音は鳴りません。
新聞配達がまだできる時代だったので、新聞配達を朝だけやってお小遣いを貯めました。
確か、1月数千円だったと思います。
1年程するとYAMAHAの一番安いフルートが確か3万円とか4万円とかだったと思いますがそれを手に入れました。
自分なりに工夫をして音を出してみましたがやっぱりもらった歌口の欠けたフルートとは音が違います。
歌口の欠けたフルートは結局楽器としてはダメだったのですね。
経済的に余裕がなくても壊れた楽器はやっぱりダメです。
その後はヤマハのフルートを大事にして練習に励みました。

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